所長からのメッセージ

所長からのメッセージ

(1)はじめに

 司法修習生をはじめとする、就職活動中の皆さんは、いままさに、法曹の世界に足を踏み入れようとしているところですね。
最初に入所する事務所は重要です。私も最初に勤務した法律事務所で、ボスと1対1で接しながら、弁護士として、本当に重要なことを叩き込まれてきました。

 新人弁護士の毎日は、控え目に言っても大変です。法律の知識は多少あるけれど、実際に相手方と交渉をしたり、訴訟で判決をとったことはない。自分が新人のときを振り返ると、自動車の教習所を出たばかりなのに、いきなりお客さんを乗せてタクシーを運転しているような、そんな心持ちでした。

 初日から取り組んだ案件は法人破産の申立てでした。破産法選択であったわけでもなく、予備知識はゼロで、条文や書籍を読み込みながら、倒産直前の会社で散乱した資料を収集しながら、申立書をドラフトしていきました。悪戦苦闘しながら、自分の頭で考えて身につけたものこそ、本物である。私たちの仕事には、そのような職人的な側面があると思います。他人任せで仕事をしていては、弁護士としての成長はありません。

(2)弁護士としての基礎力をつける

 まずは、弁護士としての足腰を鍛えること。具体的には、所長弁護士とチームを組んで、具体的な案件を担当し、手足を動かし、一生懸命思考してもらうこと。法律事務から訴訟実務まで、基本動作を身につけること。法律相談から、交渉、保全、訴訟提起、判決、執行まで、いろいろな案件を一通り回してみること。

 いちど経験したことであれば、次の機会には、自信を持って依頼者に説明をしたり、戦略的に方針を立案したりすることができます。最初の数年は修行と思って、いろいろな案件に取り組んでいきましょう。弁護士業は面白い。難局を超えて、祝杯をあげる。そのたびに、ますます仕事が面白くなってくる。私たちは、最初のキャリアで、そのような経験を積むべきなのです。

 もっとも、一人で体当たりをしていても仕方がありません。同僚からの適切なフィードバックがあってこそ、思考や経験は深まります。ナビアスでは、月に1度、PFB(パフォーマンス・フィードバック)を実施し、成長を実感できるようにしています。

 また、判例時報を素材にした判例勉強会や英語勉強会も定期的に実施しています。スキルアップ支援制度として、会社として社員の自己研鑽に一定の補助もしています。

 将来独立をしたい、専門分野で力を磨きたい、いろいろな想いをもって、就職活動をされていると思います。弁護士として、最初に良い経験をすることができれば、その後は一生研鑽を続けることができます。私自身が、勤務弁護士時代に良い経験をすることができましたので、後輩となる弁護士にも、一生困らないくらいの実力を得て欲しいと思っています。

(3)キャリアを構想する

 私たちの業界は、大きな転換期にあります。値札の無いお寿司屋さんのような敷居の高い存在から、普通の人が、人生の重大な局面の中で出会い、頼りにされる身近な存在へと、弁護士に対する市民の視線も変化しています。

 弁護士業は、他士業と異なり、できることの幅がきわめて広くあります。だからといって、漫然とあらゆるニーズに応えていては、「何でもできるけれど特徴の無い弁護士」が生まれるだけで、「選ばれる弁護士」にはなれません。弁護士としての基礎力を身につけたら、次は、誰に対して、どのようなサービスを提供したいかを考えていきましょう。

 ランチェスター戦略という言葉をご存知でしょうか。私が東京を離れて横須賀で開業した理由は、比較的小規模なマーケットであっても、まずは市場で1位になることを目指しているからです。

 横須賀には米軍基地があり、40万人の横須賀市民に対して2万人以上のアメリカ人が居住しています。神奈川県全体に暮らすアメリカ人は、実は東京都よりも多いのですが、これらの人たちに対してサービスを提供している弁護士の数は、東京と比較して圧倒的に少ないのです。正直なところ容易な案件ではありませんが、圧倒的な差別化と独自のノウハウの蓄積が可能な分野となっています。

 また、横須賀というエリアも、一方では人口減少率が高く先細りのイメージがあるかもしれませんが、高齢化率と外国人比率の高さからすれば、「ヨコスカは日本の未来」であり、新しいサービスを試行できる地域ともいえます。

 ナビアスは、あなた自身が何をしたいのか、どんな弁護士になりたいのか、ということを、時間をかけて考えていける場でありたいと考えています。

(4)ソーシャルビジネスを構築する

 私は、法律事務所はソーシャルビジネスであると思っています。私たちは、民間企業であると同時に、公的な役割も担っています。

 皆さんは、これから、弁護士として現場で活躍する中で、様々な人の人生に触れ、地域の課題にぶち当たるはずです。そして、問題を解決するために自分に何ができるのか、必死で思考するはずです。その案件では、うまくいかないこともあるかもしれない。しかし、「出会ってしまった問題」から目を背けずに、探求を続けていきましょう。

 ビジネスは差別化です。一見して儲かりそうなことは誰もがやるので、よほどの参入障壁がない限り、そのうち価格競争になってしまう。一方で、社会の課題を解決すること、「それはぜひ必要だ」と思われることを諦めず続けていれば、いずれ世の中は評価してくれるはずです。 法律事務所が社会に貢献できることは、まだまだ沢山あるはずです。それでも、ボランティアでは、大きな力にはなり得ない。いったいどうしたら、法律事務所が持続的に社会課題を解決する集団になれるのか。一緒に知恵を絞れる人を求めています。

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